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「海洋性プラセンタ」の謎を解く

海洋性プラセンタって、聞いたことありますか?
ネットショップなどでプラセンタ製品を購入する時に、見かけたことがあるかもしれませんね。
「プラセンタ」の前に、海をイメージさせるネーミングが添えられている場合も多いようです。
海洋性というからには、海の動植物が原料なのかなと思いますよね。 でも、ちょっと待って。
海の生物は、卵で産まれるものが多数を占めています。
プラセンタは胎盤、すなわち胎生動物が体内に作る臓器ですから、卵で生まれ育つ卵生動物に存在するはずがないものです。
では、海洋性プラセンタとは、何を原料に作られているのでしょう。

海の哺乳類も胎盤を作るけれど・・・

海の生物の中にも、わずかながら胎生動物はいます。賢く、かわいらしいことで人気のイルカ、大きなクジラ、
アザラシやアシカ、トドの仲間、そして獰猛なサメの一部です。
また、サメの仲間には卵で産まれる卵生と、胎児で生まれる胎生、さらに卵胎生という3通りの繁殖形態があります。
ちなみに、一見怖そうな顔立ちをしたシャチはイルカの仲間なので胎生です。

海洋性プラセンタの原料となる胎盤がこれらの動物の胎盤であったら、
それは正しく「プラセンタ」なのですが、残念ながら違います。


イルカやクジラ、アザラシやサメなどを大量に養殖したり捕獲したりするのは難しいため、
海洋プラセンタとして製造販売するのは至難の業。
さらにクジラについては、捕獲そのものが国際的には禁じられる流れにあります。

仮にこれらの海洋動物の出産に偶然立ち会うことができても、出産直後の動物は気が荒く、入手には相当なリスクを伴います。
仮に巨大なクジラの新鮮な胎盤が手に入れば、大変大きなものですし、原料としても使いでがありそうですよね。
けれど、出産直後に後産として排出された胎盤を入手することができたとしても、
安全衛生を確認して製品化するためには、たくさんの検査や手続きが必要になります。

結局、本当の意味での海洋性プラセンタは、コストがかかる割にメリットが少ないため、
利用されていないというのが現実的な答えなのでしょう。

海洋性プラセンタって本当は何なの?

実は、現在広く販売されている海洋性プラセンタの原料は、ほぼすべてといっても良いほど、
魚卵の一部を原料に作られた製品なんです。
中でも良く使われるのが、卵巣膜と呼ばれる薄い皮のような部分。


タラコやスジコの卵がかたまりになって収まっている透明な袋といえば、イメージしやすいかもしれません。
卵巣膜は卵そのものですらなく卵の袋ですので、胎盤のように胎児を育てる機能はありません。

それが、健康食品や美容のために使われるようになったのは、ある成分の含有量が多いことに加え、
その成分を抽出する技術が進んだことが理由としてあげられます。

実はその成分というのは「エラスチン」のこと。皮下では肌の弾力を支える成分として働いています。
海洋性プラセンタには、魚の卵巣膜由来のエラスチンほか、アミノ酸やコラーゲンが含まれています。

動物の胎盤のような成長因子は含まれていませんが、健康や美容への効果を期待されて製品化されました。
エラスチンそのものも貴重な美容・健康成分ですし、
どうしてわざわざ「プラセンタ」という名前で呼ぶようになったのかは定かではありません。

きっと、プラセンタ製品のように広く愛用されたいという期待のもとに作られた製品群なのでしょう。
ちなみに、海洋プラセンタの原料としては、鮭の卵巣膜が使われることが多いそうです。
スジコをイクラに加工する際に廃棄されてきた透明な袋と考えると、納得がいきますね。
それまでは捨てられてしまっていた素材を、製品化する技術と生産体制ができたからこそ、
海洋プラセンタという製品に生まれ変わることができたのですね。

海洋性プラセンタに効果はあるの?

こうして考えてみると、海洋性プラセンタと呼ばれる製品は、
海洋性エラスチンあるいは海洋性アミノ酸と呼ぶ方が正しく製品を表しているようです。

そういえば今から10~20年ほど前に起きたコラーゲン・ブームの時には
「海洋性コラーゲン」という製品が大ヒットしたこともありました。

つまり、海洋性プラセンタは、動物性プラセンタと同レベルの成分ではないけれど、
美肌や健康に対して一定の効果が期待できそうだ、ということになりますね。

特にエラスチンについては、他の原料で作られた製品からは得にくい成分でもありますので、
馬や豚などの動物性プラセンタ製品と併用するのが効果的といえるでしょう。

ここまでの考察から、海洋性プラセンタについてまとめてみましょう。

・胎盤を作る海の動物は主にイルカやクジラ、アザラシで、製品化が難しい。
・製品化されている海洋性プラセンタは、胎盤とは関係がないものがほとんど
・原料には、鮭の卵巣膜という魚卵を包む膜が多く使われている
・海洋性プラセンタはエラスチンが豊富
・海洋性プラセンタには細胞成長因子が含まれていない

以上のことをしっかりと確認したうえで、目的に合った製品を選びたいものですね。