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あまり見かけない羊プラセンタ製品。そのワケは

現在、日本国内で製造販売されているプラセンタ製品の原料は、馬・豚・植物の3つだけです。
植物は胎盤ではなく胎座であり、魚は胎盤でも胎座でもありません。

哺乳類であり食用でもあるのに、牛と羊がいないのに、お気づきでしょうか。
実はこの2つの胎盤は、同じ理由で使用が禁止されています。

牛の胎盤が利用禁止になったのは、狂牛病の病原体であるプリオンという
異常な変性たんぱく質の体内蓄積を予防するためでした。
プリオンは加熱しても酸で処理しても病原体として感染力を失わないため、一部の臓器の利用が禁止されました。
食肉としての牛肉は今でも普通に販売されていますよね。これは、食肉として流通する前の段階で、
プリオンの蓄積が大きい「特定危険部位」とされる部位を取り除いてあるからなのです。
この「特定危険部位」には舌・頬肉・皮以外の牛の頭部、脊髄・脊柱などとともに、胎盤が含まれています。

そして、実は羊や山羊においても、ほぼ同じ処理が義務付けられているのです。

狂牛病とよく似た、羊の不治の病

羊の場合では、狂牛病ではなく「スクレイピー」という名前の病気で、狂牛病と同様、
異常な変性たんぱく質プリオンが脳に蓄積することで起こります。
実は、スクレイピーは日本国内でも何度か起きていますが、あまりニュースにならないですよね。
羊肉(ラム、マトン)は食肉としての流通量が少なく、社会的な影響が少ないので、
あまり取り上げられないだけのことなのです。

狂牛病もスクレイピーも、ニュースで報じられた「腰が抜けて倒れる動物の印象が強いですが、
生涯を無症状で終えて、死亡後の検査で初めて感染が分かるケースもあります。
ですから「症状が出ていない動物が原材料だから、大丈夫」とは言い切れません。

その結果、感染拡大の可能性がある部位の利用は禁止されているというわけです。
発症すると治療方法がないのが狂牛病でありスクレイピーですから、感染しないように最大の注意を払って、
厳しい規制を敷くしか予防方法がないというのが、国の考え方なのでしょう。

そんなわけで、日本国内では牛と羊の胎盤を用いた製品の製造ができなくなっています。

製造できないけど買うことはできる羊プラセンタ

今、「製造ができなくなっている」とお伝えしましたね。 羊のプラセンタを利用した製品の製造はできないけれど、
一部については販売だけできます。

それは、海外からの輸入品。原材料としてニュージーランドとオーストラリアで育った羊の胎盤が使われています。

オーストラリアやニュージーランドといえば、かわいい羊たちが大草原を集団で移動するイメージがありますよね。
その通り、羊は2つの国の大切な産業動物であり、国と農家がプライドをかけて守っているともいえます。
そして、オーストラリアやニュージーランドでは、羊たちに与える餌の基準も厳しく守られているのです。

そもそも狂牛病やスクレイピーは、死んだ牛や羊の肉を飼料に加工し、
生きている牛や羊に与えたことが発症原因の一つと考えられています。
ですから、広い草原でたっぷり草を食み、厳しい基準の飼料を与えられている羊たちは発症しなかったということなのでしょう。

個人売買のリスクは自己責任。良く考えて

さて、ここまでは「ぎりぎりセーフ」の話をしてきましたが、
ここから先はグレーゾーンから限りなくクロに近い(?)話になります。

牛や羊の胎盤由来の製品は、世界中で作られています。グレーゾーンに当たるのは、
それを個人的に輸入したり、個人使用を目的として海外から持ち帰ったりした場合です。

品質管理のルールがゆるい国の原材料製品ほど、スクレイピーや狂牛病のリスクが高くなりますが、
個人が自分で使用する範囲のものは、輸入も持ち帰りも禁じられていません。

ところが、それがオークションや個人取引の売買サイトで売られているとしたら……?
「安い」「珍しい」とか、巧妙な売り言葉につられて「効果がありそう」と思って飛びついてしまう人もいるかも知れません。
でも、それで肌トラブルが起きても、自己責任になってしまいます。

中には羊プラセンタ、牛プラセンタが含まれていることを記載しないで
「美白効果があるようです」「若返り効果があるそうです」などと説明している場合もあります。
こうなってくると、製造や販売のルールなど完全無視と言ってもいいくらいの話。
「使い切れないほど買っちゃいましたので安くお譲りします」と書かれていたとしても、
果たしてどこの国でどのように製造されて、原価がいくらなのかわからないものさえあります。
こうした製品はスクレイピーや狂牛病以前に、他の原料に問題があってアレルギーを起こしてしまう場合もあるのです。

「人の肌に近く親和性が強い」と説明されることも多い羊プラセンタですが、
原料の品質管理や製造方法によっては良くも悪くもなります。
肌や身体に合わない時のリスクをしっかりと踏まえた上で、使用を検討したいものです。